是正処置と予防処置の違い
是正処置とは、すでに発生した不適合(不具合・クレーム・逸脱など)に対して、その原因を取り除き、同じ問題が再び起きないようにする活動です。一方予防処置は、まだ問題として顕在化していないものの、将来起こり得る不適合を未然に防ぐための活動を指します。どちらも「原因に手を打つ」という点は共通していますが、対象にしているのが「すでに起きたこと」か「まだ起きていないこと」かという時間軸が異なります。
ポイント: ISO9001:2015では、旧版にあった「予防処置」という独立した要求事項は姿を変え、規格全体を通じたリスクに基づく考え方(リスクベースドシンキング)に組み込まれています。そのため現在は、個別の「予防処置手順」を別立てで運用するというより、日常の計画・レビューの中でリスクと機会を考慮する仕組みそのものが、かつての予防処置の役割を担っていると理解しておくと整理しやすくなります。是正処置(10.2項)は、現行規格でも引き続き明確な要求事項として存在します。
是正処置の進め方(5ステップ)
是正処置は「原因を調べて対策する」という単純な話に見えて、実務では途中の工程が抜け落ちがちです。次の5ステップで整理すると、抜け漏れを防ぎやすくなります。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①発生の把握・記録 | 不適合の内容、発生日時・工程・関係者を記録し、まず応急処置(不良品の隔離・流出防止など)を行う |
| ②原因分析 | なぜなぜ分析や特性要因図などを使い、表面的な原因だけでなく、作業手順・教育・設備・管理の仕組みまで掘り下げて根本原因を特定する |
| ③対策の立案・実施 | 根本原因に対する恒久対策を立案し、実施する。応急処置と恒久対策を混同しないことが重要 |
| ④効果の確認 | 対策実施後、一定期間をおいて同じ不適合が再発していないかを確認する。対策した時点で終わりにしない |
| ⑤標準への反映 | 効果が確認できた対策を、作業手順書・標準書・教育内容に正式に反映し、対策後の状態を「新しい標準」として定着させる |
是正処置が「その場しのぎ」で終わる典型パターン
是正処置の記録上は「対策済み」となっていても、実際には同じ不具合が数ヶ月後に再発するケースが少なくありません。よくある原因は次のようなものです。
- 応急処置で対応を終えている: 不良品の選別・廃棄だけを行い、なぜそれが起きたのかという根本原因分析まで進んでいない
- 対策が現場の手順書に反映されていない: 対策会議では決まったはずの内容が、実際の作業手順書には書き込まれず、口頭指示だけで終わっている
- 手順書は直したが、作業者に再教育していない: 文書は更新されても、日々の作業をその通りに変える教育・周知が行われていない
- 効果確認をしていない: 対策を実施した時点で「完了」として記録を閉じてしまい、本当に再発していないかを後日確認していない
これらに共通するのは、是正処置が「現場で実際に行われる作業」まで到達していないという点です。対策の効果を持続させるには、是正処置と手順書改訂・再教育・理解度確認を1つの流れとして扱う必要があります。この再発防止の仕組み化については、不具合の再発防止対策とは?手順書・教育記録への反映方法をわかりやすく解説で詳しく解説しています。
是正処置を手順書・教育記録に確実に反映する
是正処置で決めた対策を標準に反映する際は、単に手順書の該当箇所を書き換えるだけでなく、誰が・いつ・なぜ改訂したのかを記録し、承認を経て発行するという改訂管理のプロセスに乗せることが重要です。改訂管理・承認フローの設計手順は作業手順書の改訂管理と承認フローの整え方|属人化・形骸化を防ぐ運用ルールで解説しています。是正処置の記録と手順書の改訂履歴を紐づけておくと、監査対応の際にも「この不具合に対してこう対策し、手順書のこの版に反映した」という経緯を一貫して説明できます。
AI Manual Coachでできること
是正処置の対策を標準に反映する工程は、手順書の書き換え・承認・教育という複数の作業にまたがるため、紙やExcel・メールでの運用では対応漏れが起きやすくなります。AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業手順書を自動生成する製造業向けのAIマニュアル自動生成システムで、是正処置後の標準反映を次のように支援します。
- 作業方法の変更を動画から手順書へ自動反映: 対策後の作業を撮影し直してアップロードすれば、AIが変更後の手順を解析して改訂案を自動生成でき、書き起こしの手間を抑えられる
- 申請者・承認者ロールによる多段階承認ワークフロー: 是正処置に伴う手順書改訂を、誰が確認し誰が承認したかという記録を残しながら発行できる
- マニュアルのバージョン管理: 対策前後の手順書をバージョンとして保存でき、是正処置の経緯を後から追跡しやすくなる
- 理解度テスト自動生成: 改訂した手順書の内容から理解度テストを自動生成し、作業者が対策後の手順を正しく理解しているかを確認できる
まとめ
是正処置は発生した不適合の原因を取り除き再発を防ぐ活動、予防処置は将来のリスクを未然に防ぐ活動であり、ISO9001:2015では予防処置の考え方はリスクベースドシンキングに組み込まれています。是正処置は①発生の把握②原因分析③対策の立案・実施④効果の確認⑤標準への反映という流れで進め、特に⑤の「標準への反映」を手順書改訂・再教育・理解度確認まで含めて実行することが、対策を「その場しのぎ」で終わらせないカギです。