直行率とは

直行率とは、投入した製品のうち、手直し・修正・再検査を一度も経ずに、最初の1回で全工程を合格して完成した製品の割合です。英語では FPY(First Pass Yield)と呼ばれます。「最終的に良品になったか」ではなく「一発で良品になったか」を問う指標であり、途中で手直しをして合格した製品は、直行率の計算では合格に数えません。

この「手直し品を合格に数えない」という点が直行率の本質です。手直しをすれば製品としては出荷できますが、手直しには作業時間・再検査・場合によっては部品の交換といったコストがかかっています。良品率や歩留まりだけを見ていると、この手直しのコストは数字に表れず、「不良は少ないのに現場がいつも忙しい」という状態の原因が見えないままになります。

直行率と歩留まり・良品率の違い

直行率・歩留まり・良品率は、いずれも「良品の割合」を表す指標ですが、手直し品の扱いが異なります。

指標 何を測るか 手直し品の扱い
直行率(FPY) 手直しなしで一発合格した割合 合格に含めない(1回でも手直し・再検査すれば直行から外れる)
歩留まり 投入数に対する最終的な良品の割合 手直しの末に良品になれば合格に含める
良品率 検査数に対する良品の割合(不良率の裏返し) 検査に合格すれば合格に含める

たとえば100個を投入し、90個が一発合格、5個が手直しの後に合格、5個が廃棄になった場合、歩留まりは95%ですが直行率は90%です。歩留まりだけを見れば「悪くない工程」に見えますが、直行率で見ると10個に1個は余計な工数がかかっていることが分かります。歩留まりそのものの計算方法と改善の進め方は歩留まりとは?計算方法・直行率との違いと改善の進め方で詳しく解説しています。

直行率の計算方法と数値例

単一工程の直行率は次の式で計算します。

直行率(%)= 手直しなしで合格した数 ÷ 投入数 × 100

複数工程からなるラインでは、各工程の直行率を掛け合わせたものが工程全体の直行率になります(RTY: Rolled Throughput Yield とも呼ばれます)。たとえば3つの工程の直行率がそれぞれ95%だった場合、全体の直行率は 0.95 × 0.95 × 0.95 ≒ 85.7% です。各工程では95%あっても、ライン全体で見ると7個に1個は途中のどこかで手直しが発生している計算になります。

ポイント: 工程数が多いほど、全体の直行率は各工程の直行率よりも大きく下がります。「どの工程も悪くないのにライン全体では手直しが多い」と感じる場合、工程別に直行率を分解して掛け算の構造で捉えると実態がつかめます。

直行率で見ると、隠れた手直しコストが見える

手直しは「最終的には良品になる」ため、不良のような明確な損失として扱われにくく、現場の頑張りの中に埋もれがちです。しかし手直しには、手直し作業そのものの工数、再検査の工数、手直し待ちの仕掛かり在庫、納期遅れのリスクといったコストが伴います。品質に関わるコストを予防・評価・失敗の3つに分類する考え方では、手直し費は社内失敗コストにあたります(詳しくは品質コストの考え方と削減のポイントを参照)。

直行率を管理指標に加える利点は、この隠れたコストが数字として毎日見えるようになることです。「歩留まり95%・直行率78%」のような差が見えれば、その差の分だけ手直しに工数が流れていると判断でき、改善の優先度を客観的に議論できます。

直行率が低い工程の見つけ方と改善の進め方

ステップ1: 工程別・不良項目別に直行率を分解する

まずライン全体の直行率を工程ごとに分解し、どの工程で直行から外れる製品が多いのかを特定します。さらにその工程の中で、手直しの理由(寸法修正、外観手直し、締め直し等)を項目別に層別すると、上位の少数項目が手直しの大半を占めていることが多く、取り組む対象を絞り込めます。

ステップ2: 手直しの発生要因を現場で確認する

絞り込んだ項目について、実際の作業を観察し、要因を掘り下げます。設備条件のばらつきなのか、材料ロットの差なのか、作業者によるやり方の違いなのかで、打つ手は変わります。要因の掘り下げにはなぜなぜ分析のように事実ベースで真因に迫る手法が有効です。

ステップ3: 作業のばらつきは標準作業の見直しで抑える

作業者によって手直しの発生率が違う場合、熟練者のやり方と手直しが多い作業者のやり方の差を具体的に把握し、その差を作業手順書に反映して標準を引き上げます。「気をつけて作業する」ではなく、押さえるべきコツや確認ポイントが手順として明文化されている状態を目指します。

ステップ4: 対策後の直行率を継続的に追う

対策の効果は、対策した項目の手直し件数と工程の直行率で確認します。一時的に改善しても、作業者の入れ替わりで元に戻ることがあるため、手順書の教育とセットで定着させ、直行率を定点観測する運用に組み込みます。再発防止を手順書改訂や教育記録まで確実につなげる方法は不具合の再発防止対策で詳しく解説しています。

作業ばらつきによる手直しを、手順書とスキル評価で減らす

直行率改善の打ち手のうち、作業者間のばらつき対策は「熟練者のやり方をどう言語化し、どう教えるか」が実務上のハードルになります。AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業手順書を自動生成する製造業向けのシステムで、直行率改善の次の場面で役立ちます。

  • 熟練者・新人比較分析: 手直しが少ない熟練者と手直しが多い作業者の作業動画を比較し、差分と改善提案を含む分析レポートを生成。「どこでやり方が違うのか」を言語化できる
  • マニュアル自動生成: 見つかったコツ・確認ポイントを反映した作業を撮影すれば、テキスト・画像付きの手順書をAIが自動生成。標準の引き上げを短いサイクルで回せる
  • 習熟度・スキル評価: 作業動画からスキルスコアを算出してダッシュボードで可視化。教育後の定着状況を作業者単位で追える

手直しの原因になっている「作業の差」を、手順書に変える

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まとめ

直行率は、手直しなしで一発合格した割合を測る指標であり、歩留まりや良品率では見えない手直しコストを数字にします。工程別・不良項目別に分解して手直しの多い箇所を特定し、設備・材料・作業のどの要因かを現場で確認したうえで、作業のばらつきには標準作業の見直しと教育で応える——この繰り返しが直行率改善の王道です。歩留まりとあわせて直行率を定点観測に加えることで、「不良は少ないのに現場が忙しい」状態の正体をつかみ、改善の優先順位を客観的に決められるようになります。