「誰が手順書を書くか」という悩み

作業手順書の整備が課題になったとき、多くの現場が突き当たるのが「誰が書くのか」という問題です。選択肢は大きく2つに分かれます。技術文書の作成を専門とするコンサルティング会社やテクニカルライターに外注するか、実際に作業を行っている社内の担当者が内製するかです。どちらにも一長一短があり、自社の状況によって最適な答えは変わります。

外注のメリット・デメリット

観点 内容
メリット: 文書としての完成度 文書構成・表現・読みやすさについて専門的な訓練を受けたライターが作成するため、体裁の整った手順書に仕上がりやすい
メリット: 社内担当者の工数を確保できる 手順書作成という慣れない作業に社内の生産技術・製造担当者の時間を割かずに済み、本来の業務に集中できる
デメリット: 現場の暗黙知が伝わりにくい 外部のライターは現場の作業を直接経験していないため、取材・ヒアリングを通じて情報を引き出す必要があり、微妙な力加減やコツといった暗黙知が抜け落ちるリスクがある
デメリット: 改訂のたびに依頼が発生する 工程や設備が変わって手順を改訂したいとき、その都度、外部業者に修正を依頼する必要があり、社内で完結する改訂と比べて時間がかかりやすい
デメリット: 手順書の件数が増えるほど費用がかさむ 作成を依頼する手順書の本数・工程数に応じて費用が積み上がっていくため、対象工程が多い現場ほど総コストが大きくなりやすい

内製のメリット・デメリット

観点 内容
メリット: 作業を行った本人が直接文書化できる 実際に手を動かした担当者が書くため、力加減や注意点といった現場の暗黙知を、取材を挟まずそのまま反映しやすい
メリット: 変更があった際にすぐ改訂できる 工程が変わったその場で、社内の担当者が手順書を直接修正できるため、外部への依頼を待つ時間が発生しない
デメリット: 作成が本来業務の合間の作業になる 手順書作成は多くの場合「片手間」の作業として扱われ、生産や品質管理の本来業務が忙しいと後回しにされがちになる
デメリット: 書き手によって品質にばらつきが出る 文書作成に慣れていない担当者が書くと、必要な情報の抜け漏れや、読み手にとって分かりにくい構成になりやすい

判断基準: 何を軸に選ぶか

外注と内製のどちらが向いているかは、次の4つの軸で自社の状況を整理すると判断しやすくなります。

  • 初回作成が必要な手順書の件数: 対象となる工程・作業が多いほど、外注は総費用がかさみやすく、内製は担当者の負荷が大きくなりやすい
  • 想定される改訂の頻度: 設備更新や工程変更が頻繁な現場ほど、そのたびに外部依頼が発生する外注の負担は大きくなり、即時に直せる内製の強みが活きる
  • 予算: 外注は専門性への対価として一定の費用がかかる一方、内製は社内の人件費(本来業務からの持ち出し)というコストとして表れる
  • 社内担当者の作成に割ける時間: 生産技術・製造・品質管理の担当者が、通常業務と並行して作成に充てられる時間がどれだけあるか

ポイント: 「初回は外注で体裁の整った土台を作り、以降の軽微な改訂は内製で対応する」という組み合わせ方をする現場もあります。ただし、この場合も改訂を重ねるうちに文書の書式や粒度が徐々にばらついていくことがあるため、改訂のルール(誰が・どのフォーマットで直すか)を最初に決めておくことが重要です。改訂管理・承認フローの設計については作業手順書の改訂管理と承認フローの整え方もあわせてご参照ください。

第三の選択肢: AIによる内製支援

外注と内製の対立軸で語られてきた手順書作成ですが、近年はAIによる自動生成という第三の選択肢が登場しています。AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業手順書を自動生成する製造業向けのAIマニュアル自動生成システムです。ライティングの専門知識がなくても、実際に作業した担当者が撮影した動画から手順書の下地をAIが作成するため、次のような形で内製・外注双方の課題に対応します。

  • 文書化ノウハウを社内に残したまま作成負担を下げる: 動画をアップロードするだけで手順書が自動生成されるため、内製のデメリットだった「文書として書き起こす作業そのものの負担」を減らしつつ、暗黙知を持つ本人が撮影した動画がそのまま元データになるという内製の強みを保てる
  • 改訂のたびに外部依頼を挟まない: 工程が変わった際も、新しい作業動画を撮影してアップロードするだけで改訂案を生成でき、外注のように都度の依頼・納期待ちが発生しない

つまり、「暗黙知を持つ本人が作る(内製の強み)」ことと「文書として書き起こす手間がかからない(外注に頼りたくなる理由の解消)」ことを両立させる位置づけになります。手順書の件数が多く、かつ改訂の頻度も高い現場ほど、この選択肢の効果が大きくなりやすい傾向があります。

書かない内製、という選択肢

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まとめ

手順書作成の外注・内製は、それぞれ文書としての完成度や暗黙知の反映しやすさ、改訂の即時性、費用のかかり方が異なります。作成が必要な件数・想定される改訂頻度・予算・社内担当者が作成に割ける時間の4つの軸で自社の状況を整理し、どちらが自社に合うかを判断することが基本です。加えて、動画から手順書を自動生成するAIという選択肢を組み合わせれば、暗黙知を持つ本人が内製しながら、文書化そのものの手間を大きく減らすという両立も検討できます。