不適合品管理とは
不適合品管理とは、規格・仕様・判定基準といった要求事項を満たさない製品(不適合品)を確実に見分け、良品と区別して管理し、適切な処置を決定・実行することで、不適合品の意図しない使用や後工程・顧客への流出を防ぐ活動です。不良品管理、不合格品管理と呼ばれることもあります。
不適合品管理の目的は、「不良を責めること」ではなく「不良を流さないこと」と「不良から学ぶこと」の2つです。不適合品を正しく識別・隔離できていれば流出は防げますし、不適合の内容と処置が記録として残っていれば、再発防止や工程改善の材料になります。
ISO9001(箇条8.7)の要求事項の概説
ISO9001では、箇条8.7「不適合なアウトプットの管理」で不適合品管理を要求しています。要求内容をかみくだくと、次の4点です。
- 識別と管理: 要求事項に適合しないアウトプットを識別し、意図しない使用や引き渡しを防ぐように管理すること
- 処置の実施: 不適合の性質と影響に応じて、修正(手直し等)、分離・封じ込め・返却または提供の一時停止、顧客への通知、特別採用(規格を外れたまま使用する許可)の取得、のいずれか(または組み合わせ)の処置をとること
- 修正後の再検証: 手直し・修理した製品は、要求事項への適合を改めて検証すること
- 記録の保持: 不適合の内容、実施した処置、取得した特別採用、処置を決定した権限者を、文書化した情報として残すこと
ポイント: 不適合品管理と混同されやすいものに逸脱管理があります。不適合品管理が「規格を満たさない製品(モノ)」の管理であるのに対し、逸脱管理は「決められた手順・条件から外れた事象(プロセス)」の管理です。手順の逸脱があっても製品が規格内のこともあれば、その逆もあるため、両方の仕組みが必要です。
不適合品管理の4ステップ(識別・隔離・処置判定・記録)
ステップ1: 識別 — 不適合品であることを現品に表示する
不適合品(および判定保留品)を発見したら、まず現品そのものに識別表示を付けます。赤札・不適合ラベル・色付きテープなど、良品と一目で区別できる表示を現品または現品の容器に直接付け、品番・数量・不適合内容・発見日・発見者を記載します。伝票や口頭の申し送りだけで済ませると、モノと情報が分離した時点で紛れ込みが始まります。
なお、外観品質のように合否の境界が曖昧な項目では、そもそも「不適合品と判定できるか」が識別の精度を左右します。判定基準は限度見本などで明確にしておきます。
ステップ2: 隔離 — 良品と物理的に分ける
識別した不適合品は、専用の不適合品置き場に移動し、良品の流れから物理的に切り離します。置き場は区画線や表示で明確にし、「不適合品はここ以外に置かない」「ここにあるものは工程に戻さない」をルール化します。誤って持ち出されやすい品や重大な不適合品は、施錠できる保管場所を使うこともあります。
ステップ3: 処置判定 — 権限者がどう扱うかを決める
隔離した不適合品をどう処置するかを、あらかじめ定めた権限者(品質管理責任者等)が判定します。主な処置の選択肢は次のとおりです。
| 処置 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 手直し | 要求事項に適合する状態に修正する | 手直し後の再検証(再検査)が必須 |
| 修理 | 使用上支障のない状態に直す(規格どおりには戻らない) | 顧客要求によっては顧客の承認が必要 |
| 特別採用 | 規格を外れたまま、影響を評価したうえで使用を許可する | 顧客要求に関わる場合は顧客の承認を得て記録に残す |
| 格下げ | 別のグレード・用途に転用する | 転用先の要求事項への適合は確認する |
| 廃棄 | 使用できないものとして処分する | 廃棄までの間も識別・隔離を維持する |
| 返却 | 購入品・支給品を供給者に戻す | 供給者への是正要求とセットで行う |
ステップ4: 記録 — 内容・処置・判断者を残す
不適合の内容(何が・いくつ・どの基準に対して)、実施した処置、特別採用の承認、処置を決定した人を記録します。この記録は、繰り返し発生している不適合の傾向分析や是正処置の起点になります。また、同じ原因の不適合品がどのロットまで及ぶかを特定するには、ロット・製造日・設備と現品を紐付けるトレーサビリティの仕組みが前提になります。
現場で不適合品が紛れ込む典型パターンと対策
ルールを作っても、不適合品の紛れ込みは現場の細部で起こります。典型パターンと対策を押さえておきましょう。
| 典型パターン | 何が起きているか | 対策 |
|---|---|---|
| 識別表示が消える・外れる | 付箋やメモ書きが搬送中に脱落し、ただの製品に戻ってしまう | 脱落しにくい表示方法(ラベル・荷札)を標準化し、容器単位でも識別する |
| 置き場が決まっていない | 「とりあえず作業台の脇に」置かれた不適合品が、良品と同じ通い箱に戻される | 工程ごとに不適合品の専用容器・置き場を設け、区画線と表示で明示する |
| 判定保留品の放置 | 「後で判定しよう」と置かれた保留品が、時間経過とともに良品扱いになる | 保留品も不適合品と同じ識別・隔離ルールで扱い、判定期限を決める |
| 応援作業者・新人がルールを知らない | 不適合品の置き場・表示の意味を知らない人が、悪意なく現品を動かしてしまう | 識別表示と置き場のルールを配属時教育の必須項目にし、手順書に明記する |
ポイント: いずれのパターンも、個人の不注意ではなく「ルールが現物・現場のレイアウト・教育に落ちていない」ことが真因です。紛れ込みが起きたら、人を指導して終わりにせず、識別方法・置き場・教育のどれに穴があったかを確認します。
識別・隔離のルールを、画像付きの手順書と教育に落とす
不適合品管理のルールは、「どこに・どう置くか」「どのラベルを・どこに貼るか」という視覚的な情報が多く、文章だけの規定では現場に伝わりにくい領域です。AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業手順書を自動生成する製造業向けのシステムで、ルールの定着を次のように支援します。
- マニュアル自動生成: 不適合品の識別表示・隔離・記録の一連の作業を撮影してアップロードするだけで、テキスト+画像や動画クリップ付きの手順書をAIが自動生成できる
- 理解度テスト自動生成: マニュアル内容から理解度テストを自動生成し、応援作業者・新人への教育結果を確認・記録できる
- 承認ワークフロー: 手順書の改訂を申請者・承認者ロールで統制し、承認履歴を残せるため、ISO9001の文書管理・記録の運用と整合させやすい
まとめ
不適合品管理は、規格を満たさない製品の意図しない使用と流出を防ぐための管理であり、ISO9001箇条8.7でも識別・処置・再検証・記録が要求されています。実務は識別・隔離・処置判定・記録の4ステップで進め、処置判定では手直し・特別採用・廃棄などの選択肢を権限者が判断し、記録に残します。そして紛れ込みの多くは、表示の脱落・置き場の不備・保留品の放置・教育の抜けという仕組みの穴から起こります。ルールを現物の表示・現場のレイアウト・手順書と教育にまで落とし込むことが、不適合品を「流さない」現場への近道です。