段取り替えとは

段取り替えとは、ある製品の生産を終えて次の製品の生産を始めるまでに行う、金型・治具・工具の交換、材料の入れ替え、設備の条件設定・調整といった一連の切り替え作業のことです。段取り替えの間、設備は付加価値を生まない停止状態になるため、段取り替え時間の短縮はそのまま設備稼働率と生産能力の向上につながります。

段取り替えの短縮が重要になった背景には、多品種少量生産への移行があります。少品種大量生産であれば段取り替えの回数自体が少なく、多少時間がかかっても影響は限定的でした。しかし品種が増え、1回あたりのロットが小さくなると、段取り替えの回数が増え、その時間が生産能力を直接圧迫します。逆に言えば、段取り替えが短くなるほど小ロット化・平準化生産がやりやすくなり、つくりすぎや在庫のムダも減らせます。

内段取りと外段取りの違い

段取り替え改善の出発点は、段取り作業を内段取り外段取りに区別することです。

区分 定義
内段取り 設備を止めなければできない作業 金型の取り外し・取り付け、チャックの交換、設備内部の清掃
外段取り 設備を動かしたままでもできる作業 次の金型・治具・材料の準備と運搬、工具の点検、前ロットの片付け

設備の停止時間になるのは内段取りだけです。多くの現場では、本来は外段取りにできる「次の金型を探しに行く」「工具を取りに戻る」といった作業が、設備を止めた後に行われています。この混在を解きほぐすだけでも、停止時間は大きく変わります。

SMED(シングル段取り)の4ステップ

SMED(Single Minute Exchange of Die)は、段取り替え時間を一桁の分、つまり10分未満に短縮することを目指す改善手法で、日本語ではシングル段取りと呼ばれます。次の4ステップで進めます。

ステップ1: 現状把握 ─ 段取り作業をすべて洗い出す

まず、現在の段取り替えで実際に行われている作業を、開始から終了まで漏れなく書き出し、それぞれの所要時間を測ります。記憶や聞き取りではなく、実際の段取り替えを観測して記録することが重要です。この段階では改善案を考えず、「何にどれだけ時間がかかっているか」の事実を揃えることに集中します。

ステップ2: 内段取りと外段取りを分離する

洗い出した作業の一つひとつについて、「これは本当に設備を止めなければできない作業か」を問い、内段取りと外段取りに仕分けます。そのうえで、外段取りにできる作業は設備停止前・再稼働後に行うよう作業の順序を組み替えます。仕分けと順序の変更だけで、設備投資なしに停止時間を減らせるのがこのステップです。

ステップ3: 内段取りを外段取り化する

残った内段取りについて、やり方を変えれば外段取りにできないかを検討します。代表的な工夫には、金型を事前に予熱しておく、次の治具をあらかじめ中間ジグに組み付けておく、設備の条件設定を事前に準備した設定値の呼び出しに置き換える、といったものがあります。ここは治具の改造や標準化を伴うことが多く、生産技術部門との連携が必要になります。

ステップ4: 内段取り・外段取りそれぞれを時間短縮する

最後に、残った内段取りと外段取りそれぞれの作業時間を縮めます。ボルトの本数を減らす・ワンタッチ化する、調整をなくして位置決めで一発で決まるようにする、2人作業で並行化する、工具・金型の置き場を定位置化して探す時間をなくす、などが典型的な打ち手です。「調整」は時間のばらつきの最大要因なので、調整レスを狙うのが定石です。

動画で段取り作業を観測・分析する

SMEDのステップ1〜2の質は、現状把握の精度で決まります。ストップウォッチと帳票による観測は、観測者の負担が大きいうえ、記録できるのは事前に決めた項目だけです。段取り替えを動画で撮影しておくと、後から何度でも見返して作業を洗い出せる、歩行や探し物といった見落としがちなムダが映る、複数人で同じ映像を見ながら内外の仕分けを議論できる、という利点があります。

撮影の際は、作業者の手元と設備全体の両方が分かるカメラ位置を選び、段取り開始から終了までを通しで撮ります。撮り方のコツは作業動画の撮り方で詳しく解説しています。

ポイント: 動画観測では「作業者がその場を離れた時間」に注目します。歩行・運搬・探し物は外段取り化・定位置化の有力な改善候補であり、本人の記憶にはほとんど残らないため、映像でしか正確に把握できないことが多いからです。

短縮した段取りを標準化して誰でもできるようにする

改善した段取り替えは、手順として文書化しなければ元に戻ります。特に段取り替えは特定のベテランに依存しやすい作業で、「あの人がいないと切り替えに時間がかかる」という属人化が起きがちです。改善後のやり方を作業手順書に落とし込み、準備物のチェックリスト・作業の順序・設定値を明記して、誰が行っても同じ時間・同じ品質で段取り替えができる状態を目指します。

手順化した段取り替えは標準作業の一部として維持・改訂し、新しく段取りを担当する作業者の教育にも使います。手順書があれば、段取り替えできる作業者を増やす多能工化の教材にもなり、段取り待ちによるライン停止のリスクを下げられます。

段取り替えの動画から、観測・比較・手順書化までを支援する

AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業手順書を自動生成する製造業向けのシステムです。段取り替え改善では、撮影した動画を観測・分析・標準化の各段階で次のように活用できます。

  • 動画アップロード〜AI解析: 段取り替えの動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業の洗い出しとテキスト・画像付き手順書の作成を自動化できる
  • 熟練者・新人比較分析: 段取りの速いベテランと新任者の動画を比較し、時間差を生んでいる作業の違いを言語化した分析レポートを生成できる
  • 標準作業組合せ票(TPS準拠)のExcel出力: 改善後の作業をトヨタ生産方式に準拠した標準作業組合せ票のフォーマットでExcel出力し、標準として維持できる

段取り替えの観測から手順書化までを、動画1本から

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まとめ

段取り替えの短縮は、作業者の頑張りではなく、内段取りと外段取りの区別というものの見方から始まる改善です。SMEDの4ステップ──現状把握、内外の分離、内段取りの外段取り化、それぞれの時間短縮──を順に進め、動画による観測で事実を揃え、改善後の手順を標準化して誰でもできる状態にする。この一連の流れが定着すれば、段取り替えは「生産を止める時間」から「多品種少量生産を支える競争力」に変わります。