山積み表とは

山積み表とは、工程(または作業者)ごとの作業時間を、要素作業単位の積み上げ棒グラフとして並べ、タクトタイムの水平線と比較できるようにしたグラフです。棒の高さがその工程の作業時間の合計を表し、タクトタイムの線を超えている工程は「時間内に作業が収まっていない工程」、線より大きく低い工程は「余裕(手待ち)のある工程」だと読み取れます。トヨタ生産方式をはじめとする現場改善で、ライン編成や要員配置を検討するときの基本的な道具として使われています。

比較の基準になるタクトタイムは「稼働時間 ÷ 必要生産数」で計算します(詳しくはタクトタイムとサイクルタイムの違いを参照)。基準線が需要から決まるからこそ、山積み表は「作業が大変そうか」という感覚論ではなく、「売れるペースに対して工数がどう偏っているか」という事実の議論を可能にします。

山積みと山崩しの考え方

山積み表を使った改善は、山積み山崩しの2段階で進めます。

  • 山積み: 現状の作業時間を要素作業単位で積み上げ、工程間の偏りをありのままに可視化する段階。ここでは改善案を考えず、まず事実を揃えます
  • 山崩し: タクトタイムを超える工程の要素作業を他の工程へ移したり、作業のムダを取り除いたりして、山の高さをタクトタイム以下に、かつ工程間でそろうように組み替える段階

ポイント: 山崩しの狙いは「忙しい工程を楽にする」ことではなく、全工程の山の高さをタクトタイム近くにそろえることです。余裕のある工程が多く残る編成は、一見どの工程も間に合っているようでも、手待ちのムダを抱えたままの編成です。要素作業単位で積み上げておくのは、この組み替えを「どの作業を・どの工程へ移すか」のレベルで検討できるようにするためです。

山積み表のExcelでの作り方(5ステップ)

ステップ1: 要素作業を洗い出す

対象ラインの作業を、工程ごとに「部品を取る」「取り付ける」「締め付ける」「検査する」といった要素作業のレベルまで分解して書き出します。粒度が粗すぎると山崩しのときに動かせる単位がなくなるため、他の工程へ移し替えられる程度の細かさで分けるのが目安です。

ステップ2: 要素作業ごとの時間を測る

各要素作業の所要時間をストップウォッチや動画で実測します。1回の測定ではばらつきに引きずられるため、複数サイクルを観測して代表値を決めます。ここで実測を省略して見積もり値で作った山積み表は、山崩しの判断を誤らせるので注意が必要です。

ステップ3: 工程別の積み上げ縦棒グラフを作る

Excelで「行=要素作業、列=工程、値=作業時間」の表を作り、積み上げ縦棒グラフを挿入します。横軸に工程(作業者)が並び、各工程の棒が要素作業の積み上げで表現されれば山積みの完成です。

ステップ4: タクトタイムの水平線を引く

タクトタイムを計算し、グラフに水平線として追加します。Excelでは、全工程に同じタクトタイム値を持つ系列を追加して折れ線(マーカーなし)に変更する方法が簡単です。

ステップ5: 超過と余裕を読み取り、山崩し案を検討する

タクトタイムの線を超えている工程、大きく下回っている工程に印を付け、「超過工程のどの要素作業を、どの余裕工程へ移すか」「そもそも省ける要素作業はないか」を検討します。検討結果を反映した山積み表をもう一枚作り、改善前後を並べて確認します。

タクトタイムとの比較でネック工程を見つける

山積み表で最も高い山になっている工程が、そのラインのネック工程(ボトルネック工程)の第一候補です。ネック工程の作業時間がタクトタイムを超えていれば、他の工程がどれだけ速くても必要生産数には届かず、超えていなくても最も高い山がラインの実力(出せるペース)を決めます。ネック工程の特定方法と、TOC(制約理論)にもとづく改善の進め方はボトルネック工程の見つけ方と改善で詳しく解説しています。

要員配置の見直しへの活かし方

山積み表は、要員配置を見直す場面でも判断の根拠になります。よくある使い方は次の3つです。

  • 工程の統合: 山の低い工程が隣り合っているなら、2工程を1人で担当できないかを検討する。山崩しと組み合わせて、少ない人数で同じタクトを守る編成を探る
  • 生産数変動への追従: 必要生産数が変わるとタクトタイムの線が上下する。線が上がった(生産数が減った)ときは工程統合で人員を再配置し、線が下がった(生産数が増えた)ときはどの工程から溢れるかを事前に把握する
  • 応援・多能工化の計画: どの工程に負荷が集中するかが見えるため、応援に入れる人を誰にするか、どの作業の教育を優先するかを計画的に決められる

改善前後のバランスの良し悪しは、感覚ではなくライン編成効率の数値で比較すると、活動の成果を定量的に報告できます。

山積み表の土台になる作業時間の把握を、動画で確かなものに

山積み表の信頼性は、要素作業の分解と時間測定の正確さで決まります。AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業手順書を自動生成する製造業向けのシステムで、山積み・山崩しの前後で必要になる作業の可視化を後押しします。

  • 動画アップロード〜AI解析: 現場の作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業の区切りを整理した手順書を自動生成。要素作業の洗い出しのたたき台として使える
  • 標準作業組合せ票(TPS準拠): トヨタ生産方式に準拠した標準作業組合せ票のフォーマットでExcel出力でき、タクトタイムと作業時間の関係を標準帳票として残せる
  • 熟練者・新人比較分析: 同じ工程でも人によって作業時間が違う場合、熟練者と新人の作業動画を比較して差分を言語化した分析レポートを生成でき、ばらつきの原因検討に使える

工数バランスの議論を、実測にもとづく事実から始める

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まとめ

山積み表は、工程ごとの作業時間を要素作業単位で積み上げ、タクトタイムの線と比較することで、工程間の負荷の偏りを誰の目にも見える形にするグラフです。現状をありのままに積む「山積み」と、タクトタイムにそろえて組み替える「山崩し」の2段階で使い、ネック工程の特定、工程統合、要員配置の見直しの根拠になります。Excelの積み上げ縦棒グラフで作れる手軽な帳票ですが、その価値は要素作業の分解と時間の実測にかかっています。まず現状を正確に積むことから始めてみてください。