稼働率と可動率の違いとは

稼働率と可動率の違いとは、ひとことで言えば「需要に対してどれだけ生産したか」を測るのが稼働率、「設備を動かしたいときに正常に動いてくれる割合」を測るのが可動率、という測定対象の違いです。トヨタ生産方式では、同じ「かどうりつ」という読みを避けるため、可動率を「べきどうりつ」と読み分けます。

この2つは数値の解釈もまったく異なります。稼働率は需要(受注量)によって決まるため、100%を超えることもあれば、低いこと自体が悪いとは限りません。一方、可動率は「動かしたいのに止まっている時間」が少ないほど高くなる指標で、100%が理想です。両者を区別せずに「稼働率を上げろ」とだけ号令をかけると、需要がないのに設備を動かしてつくりすぎのムダを生む、という本末転倒が起こります。

稼働率とは

稼働率とは、設備がフルに動いたと仮定した場合の生産能力に対して、実際にどれだけ生産したかを示す指標です。一般に次の式で表されます。

稼働率(%)= 実際の生産量(生産実績)÷ フル操業時の生産能力 × 100

分子である生産実績は受注量、つまり需要で決まります。需要が生産能力を下回れば稼働率は100%未満になり、逆に残業や休日出勤で能力以上に生産すれば100%を超えることもあります。重要なのは、稼働率は市場が決める数値であって、現場の努力だけで上げるべき数値ではないという点です。売れる量以上に作って稼働率を上げても、在庫が増えるだけで利益にはつながりません。自社設備の生産能力そのものを正しく把握するには、工程別能力表を整備しておくことが前提になります。

可動率とは

可動率(べきどうりつ)とは、設備を動かしたいときに、故障やチョコ停などのトラブルなく正常に動いてくれた時間の割合を示す指標です。一般に次の式で表されます。

可動率(%)= 正常に稼働できた時間 ÷ 設備を動かしたかった時間 × 100

可動率を下げる要因は、設備の故障、チョコ停(数秒〜数分の小さな停止)、段取り替えの遅れ、材料待ち、作業のやり直しなど、現場の中にあります。つまり可動率は現場の改善努力で100%に近づけられる数値であり、だからこそ理想値は常に100%です。

稼働率と可動率の比較(早見表と数値例)

観点 稼働率 可動率(べきどうりつ)
何を測るか 生産能力に対する生産実績の割合 動かしたいときに正常に動いた時間の割合
数値を決める要因 需要(受注量) 故障・チョコ停・段取り遅れ等のトラブル
理想値 需要次第(100%超もあり得る) 100%
誰が改善するか 営業・生産計画(現場だけでは動かせない) 現場の改善活動で高められる

数値例で確認します。1個1分で生産できる設備があり、1日の操業時間が480分(8時間)だとすると、フル操業時の生産能力は480個/日です。

  • 稼働率: この日の受注が400個であれば、稼働率は 400 ÷ 480 × 100 ≒ 83%。受注が560個で残業して生産すれば 560 ÷ 480 × 100 ≒ 117% となり、100%を超えます。
  • 可動率: 400個の生産に必要な時間は400分ですが、実際にはチョコ停と段取りトラブルで60分止まり、460分かかったとします。このとき可動率は 400 ÷ 460 × 100 ≒ 87%。止まった60分がゼロになれば100%です。

ポイント: 稼働率83%は「需要がその水準だった」という事実であって、直ちに問題ではありません。一方、可動率87%は「動かしたかったのに13%の時間は止まっていた」という現場のロスであり、改善の対象です。

トヨタ生産方式で可動率が重視される理由

トヨタ生産方式が可動率を重視するのは、「売れる分だけを、必要なときに作る」というジャスト・イン・タイムの考え方と表裏一体だからです。稼働率を目標にすると、需要がなくても設備を止めないために作り続ける動機が生まれ、在庫とつくりすぎのムダにつながります。逆に可動率が高ければ、「作りたいときに、計画どおりの時間で、確実に作れる」状態が保たれるため、必要な分だけを短いリードタイムで生産できます。

言い換えると、稼働率は「設備を遊ばせないこと」を、可動率は「設備がいつでも戦力であること」を測っています。現場がコントロールすべきは後者です。

可動率を高める改善の進め方

1. 段取り替え時間を短縮する

多品種生産では段取り替えが可動率低下の大きな要因になります。内段取り(設備を止めて行う作業)を外段取り(設備を動かしたまま準備できる作業)に移す発想で短縮を進めます。具体的な進め方はSMED(シングル段取り)の解説記事を参照してください。

2. チョコ停の原因を記録して潰す

数十秒のチョコ停は「よくあること」として記録されずに流されがちですが、積み重なると大きなロスです。いつ・どの設備で・何が起きたかを記録する仕組みを作り、発生頻度の高い原因から順に対策します。原因の掘り下げには、事実ベースでなぜを繰り返す分析が有効です。

3. 標準作業を整備して作業のばらつきをなくす

同じ段取り替えでも、担当者によって所要時間が大きく違うことは珍しくありません。手順が人ごとに違えば、可動率は担当者の顔ぶれで変動してしまいます。タクトタイムを基準に標準作業を定め、誰がやっても同じ時間・同じ品質で作業できる状態を作ることが、可動率を安定して高く保つ土台になります。

標準作業の整備を、動画から始める

可動率改善の土台となる標準作業の文書化は、「書く時間が取れない」という理由で後回しになりがちです。AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業手順書を自動生成する製造業向けのシステムです。設備まわりの標準作業づくりを次のように支援します。

  • マニュアル自動生成: 段取り替えや復旧作業の動画をアップロードするだけで、テキスト・画像付きの作業手順書をAIが自動生成。手順書づくりの工数がボトルネックになりません
  • 標準作業組合せ票(TPS準拠): トヨタ生産方式に準拠した標準作業組合せ票のフォーマットでExcel出力でき、人の作業と設備の動きの組み合わせを整理できます
  • 熟練者・新人比較分析: 段取り替えが速い熟練者と新人の作業動画を比較し、時間差を生んでいるやり方の違いを言語化した分析レポートを生成できます

可動率を支える標準作業を、撮るだけで文書化する

AI Manual Coachの機能詳細・出力サンプルは、資料請求またはお問い合わせでご案内しています。

資料請求・お問い合わせ

まとめ

稼働率は需要に対する生産実績の割合であり、市場が決める数値です。100%を超えることもあれば、低くても直ちに問題とは言えません。一方、可動率は「動かしたいときに動く割合」であり、故障・チョコ停・段取り遅れといった現場のロスを映す鏡です。理想は常に100%で、現場の改善で近づけられます。まず自社の指標がどちらを測っているのかを確認し、稼働率は生産計画の議論に、可動率は段取り短縮・チョコ停対策・標準作業の整備という現場改善に、それぞれ正しく使い分けることが出発点です。