タクト工程表とは
タクト工程表とは、タクトタイム(顧客の需要から決まる「1個あたり何分・何秒で作るべきか」の基準時間)をひと区切りとした時間軸の上に、各工程の作業を順番に割り付けて一覧にした工程管理の帳票です。横軸をタクト単位で区切り、縦軸に工程(または作業者・エリア)を並べることで、「どの工程が・どのタクトで・何をするか」と、各工程の作業時間がタクトタイムに収まっているかを一枚で確認できます。
タクト工程表は、組立ラインの工程計画のほか、造船・車両・住宅のような大物の組立で「エリアごとに一定のピッチで工事を進める」計画にも使われます。共通しているのは、全工程が同じピッチ(タクト)で同期して流れることを前提に、工程の割り付けを設計するという考え方です。タクトタイムそのものの意味や計算方法はタクトタイムとサイクルタイムの違いで詳しく解説しています。
ガントチャートとの違い
タクト工程表とよく混同されるのがガントチャートです。どちらも横軸に時間、縦軸に工程やタスクを並べる点は同じですが、目的と時間軸の考え方が異なります。
| 観点 | タクト工程表 | ガントチャート |
|---|---|---|
| 時間軸 | タクトタイムで区切った一定ピッチの区画 | 日付・週などのカレンダー時間 |
| 目的 | 全工程を同じペースで同期させ、ラインバランスを設計・確認する | 個々のタスクの開始・終了と進捗を管理し、納期を守る |
| 見るもの | 各工程の作業時間とタクトタイムの過不足 | タスクの前後関係・遅れと残り日数 |
| 向いている用途 | 繰り返し生産の工程設計・ピッチ管理 | 個別受注品・プロジェクトの日程管理 |
ポイント: ガントチャートが「いつ終わるか」を管理する帳票だとすれば、タクト工程表は「決めたペースで流れ続けられるか」を管理する帳票です。繰り返し生産では、納期はタクトを守ることで結果的に守られるため、日付ではなくタクトを軸に工程を組みます。
タクト工程表の記載項目
様式は職場ごとにさまざまですが、一般に次の項目を記載します。
- タクトタイム: 帳票全体の基準になるピッチ。計算根拠(稼働時間・必要生産数)も欄外に残しておくと改訂時に迷いません
- 工程名・工程順序: 縦軸に並べる工程(またはステーション・エリア・作業者)
- 作業内容: 各工程がそのタクト内で行う作業の名称
- 作業時間: 各作業の所要時間。タクトタイムに対する過不足が読み取れるように記入します
- 担当: 作業者・班などの割り当て
- 対象品番・生産計画数: どの製品・どの計画に対する工程表かを特定する情報
タクト工程表の作り方(5ステップ)
ステップ1: タクトタイムを計算する
タクトタイムは「稼働時間 ÷ 必要生産数」で求めます。例えば1日の稼働時間が460分、1日の必要生産数が230個なら、タクトタイムは2分です。生産計画が変わればタクトタイムも変わるため、タクト工程表は計画の改訂とセットで見直します。
ステップ2: 工程と作業内容を洗い出し、作業時間を把握する
対象製品の工程を順番に洗い出し、各工程の作業内容と所要時間を実測します。ここで把握した時間が割り付けの根拠になるため、記憶や見積もりではなく、実際の作業を観測して確認することが重要です。各工程の生産能力を整理する帳票としては工程別能力表が使えます。
ステップ3: 工程をタクト単位に割り付ける
時間軸をタクトタイムで区切り、工程順に作業を割り付けていきます。1タクトに収まる作業のまとまりが1工程(1ステーション)の担当範囲になります。作業の前後関係(先にやらないと次ができない制約)を崩さないように割り付けるのがコツです。
ステップ4: タクトに収まらない工程を調整する
割り付けてみると、タクトタイムを超える工程と、大きく余る工程が必ず出てきます。超える工程は作業の一部を前後の工程へ移す、手順やレイアウトを見直して時間を詰めるなどの調整(山崩し)を行います。工程ごとの作業時間を積み上げて調整する方法は山積み表の作り方で解説しています。
ステップ5: 運用しながら実績と照らして改訂する
タクト工程表は作って終わりではなく、実際のラインの遅れ・進みと照らして改訂を続ける帳票です。特定の工程で毎回遅れが出るなら割り付けか作業方法に無理があるサインであり、工程表と現場の実態がずれたまま放置しないことが運用の要点です。
ラインバランス確認への使い方
タクト工程表の価値は、割り付けの結果としてラインバランス(工程間の作業時間のばらつき)がそのまま見えることにあります。タクトタイムぎりぎりの工程と半分しか使っていない工程が並んでいれば、そのラインには手待ちのムダと、特定工程への負荷の偏りがあるということです。
バランスの良し悪しを数値で評価したい場合は、各工程の作業時間の合計と最長工程の時間からライン編成効率を計算します。タクト工程表で偏りの場所を特定し、編成効率で改善の効果を数値で確認する、という組み合わせが定番の使い方です。
タクト工程表の土台になる「工程と時間の把握」を動画から
タクト工程表づくりで最も手間がかかるのは、帳票のレイアウトではなく、ステップ2の「工程の洗い出しと作業時間の把握」、そして調整後の標準作業を手順書に反映する作業です。AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業手順書を自動生成する製造業向けのシステムで、この土台づくりを次のように後押しします。
- 動画アップロード〜AI解析: 現場の作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業の区切りと内容を整理した手順書のたたき台を自動生成できる
- 標準作業組合せ票(TPS準拠): トヨタ生産方式に準拠した標準作業組合せ票のフォーマットでExcel出力でき、タクトタイムと作業時間の関係を帳票として整理できる
- マニュアル自動生成: 山崩し後の新しい作業のやり方を撮影してアップロードすれば、改訂後の標準作業を手順書として展開できる
まとめ
タクト工程表は、タクトタイムで区切った時間軸に工程を割り付けることで、「決めたペースで流れ続けられるか」を設計・確認するための帳票です。日付軸で納期を管理するガントチャートとは目的が異なり、繰り返し生産の工程設計とラインバランスの確認に力を発揮します。作成の手順は、タクトタイムの計算、工程と作業時間の把握、タクト単位への割り付け、収まらない工程の調整、実績との照合による改訂の5ステップです。土台になるのは正確な工程と時間の把握であり、ここを実測に基づいて丁寧に行うことが、機能するタクト工程表への近道です。