作業動画に字幕が必要になる場面
作業動画は、手の動きや速さ、力の入れ具合など、文章では伝えにくい情報をそのまま見せられます。一方で、説明の多くを音声に頼っているため、音声が届かない場面では情報が欠けます。字幕が必要になるのは、次のような場面です。
- 騒音の大きい現場で見る: 設備の稼働音で説明が聞き取れない
- 音を出せない場所で見る: 休憩室や事務所、共用のモニターで再生する
- 専門用語や数値を聞き間違えやすい: 部品名・トルク値・温度などは、耳で聞くより文字で見るほうが確実
- 日本語の聞き取りに不安がある人が見る: 外国人材や、方言・早口の説明に慣れていない新人
- 要点だけ見返したい: 字幕があると、動画を飛ばし見しても今どの手順かが分かる
どの形式でマニュアルを整備するかという判断そのものはマニュアルの形式の選び方で整理しています。本記事は、字幕付き動画を作ると決めた後の実務に絞って説明します。
字幕の形式:重ねて表示する字幕と焼き込み字幕
字幕の付け方には、大きく2つの形式があります。動画とは別に字幕データを持ち、再生時に映像へ重ねて表示する方法と、字幕を映像そのものに書き込んで1本の動画ファイルにする方法(焼き込み)です。
| 観点 | 重ねて表示する字幕 | 焼き込み字幕 |
|---|---|---|
| 誤字や言い回しの修正 | 字幕データだけを直せばよい | 修正のたびに動画を書き出し直す必要がある |
| 複数言語への対応 | 言語ごとの字幕データを用意して切り替えられる | 言語の数だけ動画ファイルが増える |
| 表示のされ方 | 再生する仕組み側で表示するため、再生環境の対応が必要 | どの再生環境でも同じように表示される |
| 向いている使い方 | 改訂が多い手順、多言語の現場での教育 | 内容が固まった動画を外部へ配布する場合 |
ポイント: 作業手順は、設備や部品の変更で改訂されるのが前提です。社内教育で使う作業動画なら、修正と言語の追加が軽い「重ねて表示する字幕」を基本にすると、字幕の直しが動画の作り直しにつながりません。
作業動画に字幕を付ける4つの手順
手順1: 動画を手順単位に区切る
長い動画に字幕を付けると、どの字幕がどの手順に対応するのかが分かりにくくなります。先に動画を手順ごとに区切り、各区間で何を伝えるかを決めてから字幕を書きます。
手順2: 説明を文字に起こして下書きを作る
撮影時の説明音声を文字に起こし、それを字幕の下書きにします。話し言葉には「えー」「こう、こうやって」のような言い淀みや指示語が多いので、そのまま字幕にせず、次の章の書き方で整えます。
手順3: 表示するタイミングを動作に合わせる
字幕は、その動作が映っている間に表示されるように合わせます。動作より先に消えたり、次の手順の映像に前の字幕が残ったりすると、見る人は映像と説明を結び付けられません。
手順4: 現場で実際に再生して確かめる
最後に、実際に見る場所と端末で再生します。音を消した状態で、初めてその作業を見る人が字幕だけで手順を追えるかを確かめると、足りない情報がはっきりします。
現場で伝わる字幕の書き方
字幕の長さは動作の速さによって変わりますが、判断の基準は「その動作が映っている間に、声に出して読み切れるか」です。読み切れない字幕は、見る人が文字を追っている間に映像を見逃す原因になります。言い回しは次の点を押さえます。
| 書き方のルール | 伝わりにくい例 | 伝わる例 |
|---|---|---|
| 1つの字幕に1つの動作 | 部品を取ってから向きを確認して差し込み、奥まで押します | 部品の向きを確認する / 奥まで押し込む |
| 指示語を使わない | これをここに合わせます | ピンを穴の印に合わせる |
| 数値と単位を省かない | いつもの強さで締めます | 規定トルクで締める(値は手順書を確認) |
| 急所は理由と一緒に書く | ここは注意 | 斜めに入れない(ピンが曲がるため) |
社内だけで通じる略語や部品の呼び名は、初めて見る人には伝わりません。字幕に使う用語は手順書と同じ表記にそろえておくと、動画と手順書を行き来しても混乱しません。
外国人材向けに字幕を多言語化する進め方
多言語化は、翻訳から始めるのではなく、日本語の字幕を翻訳しやすい形に整えることから始めます。前の章の書き方(1字幕1動作、指示語を使わない、主語と目的語を省かない)は、そのまま翻訳の精度を上げる書き方でもあります。
- 日本語の字幕を短く、省略なしに整える: 翻訳で意味がずれる原因の多くは、原文の省略とあいまいさ
- 用語の対訳を決めておく: 部品名・社内略語は訳語を1つに決め、言語ごとに表記がぶれないようにする
- 安全・品質に関わる字幕は母語話者に確認してもらう: 警告や数値条件は、機械的な翻訳のまま配布しない
- 日本語を直したら各言語も同時に直す: 改訂のたびに言語ごとのずれが生まれないよう、更新の手順を決めておく
翻訳の精度をどこまで期待してよいかはAIによるマニュアル多言語翻訳の仕組みと精度の考え方で、教育全体の進め方は外国人材への作業教育の進め方で解説しています。
字幕付き動画マニュアルを動画から自動生成する
ここまでの手順のうち、文字起こし・下書き・タイミング合わせは、動画1本ごとに手作業で行うと大きな工数になります。AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、字幕付き動画マニュアルを自動生成できる製造業向けのシステムです。字幕は元動画に字幕データを重ねて再生する形式で、本記事で説明した「重ねて表示する字幕」にあたります。AIによる自動ナレーション機能も備えています。
- 複数の形式を1本の動画から生成: 字幕付き動画のほか、テキスト+画像の作業手順書なども自動生成でき、字幕と手順書の用語をそろえやすい
- 15言語への自動翻訳: 生成したマニュアルを日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語・ベトナム語・タイ語・インドネシア語・タガログ語・スペイン語・ポルトガル語・ヒンディー語・ミャンマー語・ネパール語・クメール語に翻訳できる
- 社内用語への対応: 社内資料を学習資料(RAG)として登録すると、自社の専門用語を反映したマニュアル生成ができる
- 動画の編集: メディアライブラリで動画のトリミング編集や音声入力(アフレコ)ができる
まとめ
作業動画の字幕は、騒音下や音を出せない場所、聞き間違えやすい数値、外国人材への教育で必要になります。社内教育で使うなら、修正と言語追加が軽い「重ねて表示する字幕」を基本にし、手順単位に区切る→文字に起こす→動作にタイミングを合わせる→現場で再生して確かめる、の順で付けます。字幕は動作が映っている間に読み切れる長さにし、1字幕1動作・指示語なし・数値と単位を省かない書き方にそろえると、多言語化したときの伝わり方も良くなります。




