最初に可視化するのは、今の業務のつながり
現状の業務フローは、誰が、どの材料を受け取り、何を確認して、次の誰へ渡すかを示すものです。生成AIにはヒアリングの整理とフロー案を依頼します。担当者の説明にない承認者や、便利そうな自動処理を追加すると、実際には行っていない仕事が現状として記録されてしまいます。
まず現状の流れと、まだ確認できていない点を分けます。改善案はその後に別の資料として検討してください。IPAの要件定義の解説でも、現在の業務やシステムを可視化して把握する考え方が示されています。本記事はシステム開発ではなく、社員が原メモから業務の接続を確認する文書演習です。
以下の担当、依頼、条件は当社作成の架空教材です。実業務の承認ルールやAI実行結果ではありません。実資料へ移る前に、入力できる情報、利用する環境、各工程を説明できる確認者を会社で決めます。取引先情報や仕入条件を、そのまま練習の材料へ入れないでください。
流れを確かめる4手順で、一覧から経路へ進める
| 手順 | 作るもの | 確認すること |
|---|---|---|
| 1. 担当別に原メモを集める | 発生条件、材料、担当、渡し先の記録 | 各説明の出所が分かるか |
| 2. 工程をつなぐ | 工程ID、役割、前後関係のフロー案 | 受け渡す情報と担当が一致するか |
| 3. 分岐と未確定を分ける | 条件、戻り先、確認待ちの一覧 | 例外を通常処理へ混ぜていないか |
| 4. 経路をたどって照合する | 正常・例外の追跡表 | 開始から終了または保留まで説明できるか |
工程名を並べただけでは、次の担当へ仕事を渡せる条件は分かりません。「確認する」という工程には、何を確認し、足りない場合はどこへ戻すかを付けます。聞き取りにない部分は、AIへ埋めさせず確認待ちの番号を付けます。
3担当の架空ヒアリングを、原資料として固定する
R1/依頼担当の原メモ:消耗品名、数量、希望日を依頼票に書き、倉庫担当へ渡す。記入不足で返されたら不足を記入して再提出する。品物を受け取ったら受取記録を残す。
W1/倉庫担当の原メモ:3項目に欠落があれば、依頼担当へ依頼票を返す。そろっていれば在庫を確認する。在庫が依頼数量以上なら品物を引き渡す。在庫が足りない場合は引渡しを保留し、依頼票と在庫不足の情報を購買担当へ渡して、入荷可能日と条件の確認を頼む。希望日は確約した受渡日ではない。
P1/購買担当の原メモ:在庫不足の依頼を受け、仕入先へ入荷可能日と条件を問い合わせ、回答を倉庫担当へ共有する。購入の承認者、承認後の発注手順、入荷後に払出を再開する担当と条件は、この聞き取りでは確認していない。
この範囲で分かるのは、在庫がある場合の払出と、在庫不足の場合の条件照会までです。購買担当が発注を決めるという記載はありません。フローを一本の終了線まで伸ばすために、未確認の購入処理を描き足さないことが、この演習の判断点になります。
工程IDと担当を付けた、現状フローの完成案
コピーして使う指示文:上の架空原メモR1、W1、P1だけで、消耗品の払出依頼の現状フロー案を作ってください。工程ID、担当、受け取る材料、行うこと、次へ進む条件と工程ID、根拠メモIDを表にしてください。記入欠落と在庫不足を別の分岐にし、差戻し後の戻り先を示してください。未確認の承認、発注、再開条件は工程として確定せず、確認待ちU01へ分けてください。希望日を確約日に変えず、改善案や送信・発注操作は行わないでください。
| ID・担当 | 材料と処理 | 条件・次の工程 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| F01:依頼担当 | 消耗品名・数量・希望日を依頼票へ記入 | 倉庫担当へ渡しF02 | R1 |
| F02:倉庫担当 | 依頼票の3項目を確認 | 欠落あり→F03、そろっている→F04 | W1 |
| F03:倉庫担当→依頼担当 | 依頼票を返し、不足項目を記入してもらう | 再提出はF01へ戻る | W1、R1 |
| F04:倉庫担当 | 依頼数量と在庫を確認 | 在庫が依頼数量以上→F05、不足→F07 | W1 |
| F05:倉庫担当 | 品物を依頼担当へ引き渡す | 受け取った依頼担当がF06 | W1、R1 |
| F06:依頼担当 | 受取記録を残す | 在庫ありの払出経路は終了 | R1 |
| F07:倉庫担当→購買担当 | 引渡しを保留し、依頼票と在庫不足情報を渡す | 入荷可能日・条件の確認をF08へ依頼 | W1 |
| F08:購買担当 | 仕入先へ照会し、回答を倉庫担当へ共有 | 以降の購入・払出再開はU01の確認待ち | P1 |
接続の読み方:F01→F02。欠落ありはF03→F01へ戻る。項目がそろえばF04へ。在庫ありはF05→F06で終了。在庫不足はF07→F08まで進み、その先はU01。U01:購入承認者、承認後の発注手順、入荷後の払出を再開する担当と条件を関係者へ確認する。
完成案には、工程の作業だけでなく、役割をまたぐ受け渡しを記載しています。F08を「購買担当が発注する」へ変えると原資料から外れます。U01は担当者に確かめる事項で、AIが承認済みと扱う欄ではありません。
正常・在庫不足・記入欠落の3経路をたどる
次の数値は経路を確かめる架空の入力です。消耗品Xを使い、実在庫や実依頼を表しません。社員は経路だけでなく、どの原メモの条件を使ったかも説明します。
| ケース | 完成した追跡結果 | 照合点 |
|---|---|---|
| 正常:X・2個・希望日10月8日、在庫5個 | F01→F02→F04→F05→F06。受取記録で終了 | 3項目あり、5個は2個以上。希望日を引渡し確約日にしない |
| 不足:X・6個・希望日10月8日、在庫5個 | F01→F02→F04→F07→F08→U01。引渡し保留、条件照会の先は確認待ち | 5個は6個未満。発注済み、入荷日確定、払出完了を追加しない |
| 欠落:X・数量未記入・希望日10月8日 | F01→F02→F03→F01。数量を記入し再提出するまで在庫確認へ進まない | 過去の数量で補わず、F04やF07へ飛ばさない |
数値が変われば分岐も変わります。追跡時に工程が飛ぶ、戻り先がない、未確認の先まで完了する場合は、原メモと表を並べて修正します。実運用の検証では関係者がケースを増やし、説明が食い違う部分を確認してから正式なフローにしてください。
経営者は、受け渡す双方の確認時間を確保する
研修の提出物は、担当別の原メモ、指示文、フロー案、U01などの確認事項、経路追跡表です。一人が全工程を推測して承認せず、依頼担当、倉庫担当、購買担当が自分の担当と受け渡しを確認します。小規模な会社で兼務する場合も、役割ごとに確認する順番を残します。
業務の接続が分からないことと、生成AIの操作が分からないことは別の課題です。聞き取りに不足があるなら担当者へ戻り、原メモはそろっているのに分岐を作れないなら指示と照合の練習を行います。現状を確認した後の工程変更は、業務責任者が影響と承認条件を検討します。
担当をまたぐ仕事で、AIへの指示と照合を学ぶ
中小製造業向け社員AI研修について、可視化したい業務、関係する担当、確認できていない受け渡しを整理してご相談ください。題材、利用環境、実施条件は個別に確認します。
業務フローの整理を題材にAI研修を相談するまとめ
業務フローの可視化は、担当別の原メモを集め、工程をつなぎ、分岐と未確定を分け、経路をたどって照合する4手順で進めます。生成AIの案へ承認や発注を補わせず、原資料で説明できる範囲を示しましょう。担当者間の受け渡しを確認する練習が、現状を共有する資料につながります。
参考資料・確認日
- IPA DX SQUARE「要件定義とは?」:現行業務を可視化して把握し、関係者が要求の整理に参加する考え方。
2026年10月2日確認。4手順、R1・W1・P1、F01〜F08、U01と3ケースは当社作成の架空教材です。IPA標準の業務フロー、AI実行結果、実業務の承認記録や自社研修の確定内容ではありません。




