自由記述の分類は、改善を決める前の整理に使う
社員アンケートには、同じ困りごとを違う言葉で書いた回答や、一つの文章に複数の要望を含む回答があります。生成AIには似た話題を分類する案を依頼し、どの回答からまとめたのかを残します。経営者が見るのは、きれいな要約だけでなく、原文へ戻れる分類表です。
件数が多い話題が、そのまま最も重要な経営課題になるとは限りません。少数でも影響の大きい意見があり、同じ話題でも賛成と反対が分かれます。分類から原因や改善効果まで推定させず、次に担当者へ確かめることを整理します。本記事は一般業務の改善を対象とし、AI研修を使わない理由の分類とは分けます。
実際の社員回答には、名前がなくても部署、担当業務、出来事から人が分かる記述があります。入力前に利用環境と情報の範囲を会社で確認し、許可されていない原文を送らないでください。以下は当社作成の架空教材で、実アンケートやAIの実行結果、研修実績ではありません。
自由記述を読む4手順を、提出資料と一緒に決める
| 手順 | 社員がすること | 残すもの |
|---|---|---|
| 1. 原文と範囲をそろえる | 質問、回答ID、対象となる回答数を固定する | 原文一覧と分析範囲 |
| 2. 分類基準を作る | 何を同じ話題とするか決め、複数分類を認める | ラベルの意味と分類条件 |
| 3. 原文へ照合する | 分類と引用をIDで照合し、反対意見も残す | 回答別の分類・引用表 |
| 4. 母数を示して確認する | 件数を検算し、改善前の質問を作る | 集計表、少数意見、確認事項 |
先に分類の数だけを指定すると、どこにも合わない回答まで無理に入れることがあります。対象外や判断保留の置き場を用意し、同じ意味と確認できない文章は担当者へ戻します。文章を短くする作業と、回答の意味を判断する作業を区別してください。
架空の8回答を、IDを付けた原資料にする
質問は「事務と現場の依頼・記録のやり取りで、困っていること、続けたい方法を教えてください」です。今回の分析範囲は、次の8回答だけとします。実施人数、全社員数、部署別の回答数は材料にないため、会社全体の傾向や回答率は計算しません。
| ID | 架空の回答原文 |
|---|---|
| S01 | 紙メモの内容を共有表へもう一度入力しているので、同じ記録を二度書くのが負担です。 |
| S02 | 注文番号のない依頼が届くと、何の注文か送り主に確認しています。 |
| S03 | 共有表の保存場所が分からず、毎回近くの人に聞いています。 |
| S04 | 紙と表に二回記入しています。表の保存場所も担当によって違います。 |
| S05 | 依頼の最初に注文番号を書いてもらえると、確認しやすいです。 |
| S06 | 表の置き場所への入口を一つにしてほしいです。 |
| S07 | 今の紙メモは作業中にすぐ書けるので、残したいです。 |
| S08 | 注文番号の入力を必須にするのは、急ぎの口頭依頼では難しいです。口頭で伝える方法も残してほしいです。 |
原文は上書きせず、分析用の表を別に作ります。長い回答を一つずつ分割する場合も、元のIDと対応を残します。この例では分割せず、S04とS08に複数ラベルを付ける方法を使います。IDは分析用の目印であり、匿名性を保証する仕組みではありません。
分類基準と指示文を使い、引用付きの完成表を作る
今回のラベルは、A「二重転記」=同じ記録を紙と表へ二度書く話、B「保存場所」=共有表を探す・入口をそろえる話、C「受付項目」=注文番号の記入・欠落・必須化に関する話、D「現行手段の維持」=紙や口頭の方法を残したい話です。Cは必須化への賛成だけを意味しません。
コピーして使う指示文:上の架空回答S01〜S08とラベルA〜Dの定義だけを使い、回答ID、該当ラベル、判断に使った原文の短い引用を表にしてください。一つの回答に複数ラベルを付けて構いません。該当しないものは対象外、意味が確認できないものは保留としてください。回答にない原因、感情、部署、改善効果は追加しないでください。各ラベルに該当する回答IDと件数も示し、母数は8回答と明記してください。少数意見や反対意見を省略せず、分類と改善案を分けてください。
| ID | 完成分類 | 原文の根拠 |
|---|---|---|
| S01 | A | 「同じ記録を二度書くのが負担」 |
| S02 | C | 「注文番号のない依頼が届く」 |
| S03 | B | 「共有表の保存場所が分からず」 |
| S04 | A、B | 「紙と表に二回記入」「表の保存場所も担当によって違います」 |
| S05 | C | 「依頼の最初に注文番号を書いてもらえると」 |
| S06 | B | 「表の置き場所への入口を一つに」 |
| S07 | D | 「今の紙メモは作業中にすぐ書けるので、残したい」 |
| S08 | C、D | 「注文番号の入力を必須にするのは、急ぎの口頭依頼では難しい」「口頭で伝える方法も残してほしい」 |
この表は教材用の完成見本です。確認者は8件すべてのIDがあるか、引用が原文と一致するか、S04とS08の片方の話題が落ちていないかを照合します。「紙を残したい」を「デジタル化に反対」と広げると、書かれていない考えを追加したことになります。
集計の母数を保ち、少数・反対意見を別に読む
| ラベル | 該当回答ID | 8回答中の件数 |
|---|---|---|
| A:二重転記 | S01、S04 | 2件 |
| B:保存場所 | S03、S04、S06 | 3件 |
| C:受付項目 | S02、S05、S08 | 3件 |
| D:現行手段の維持 | S07、S08 | 2件 |
ラベルの延べ件数は2+3+3+2=10件ですが、回答数は8件です。複数ラベルがあるため、10人の意見とは書けません。Cの3件も、3人全員が注文番号の必須化を望んでいる意味ではありません。S08は必須化の難しさを述べています。
改善前の確認事項は「二重転記のどちらが原本か」「保存場所は正式に何か所あるか」「注文番号が分からない口頭依頼は現在どう処理するか」「紙メモを残したい場面はどれか」とします。S07とS08は別に引用を残し、記入負担を減らす案と、現行手段が必要な事情を一緒に検討します。
経営者は、分類の正しさと改善の判断を分けて評価する
研修の提出物は、原文一覧、分類基準、指示文、引用付き分類表、集計と確認事項を一組にします。社員がIDから原文を示し、複数分類の理由と母数を説明できれば、別の回答を使う次の練習へ進めます。引用が違う、反対意見が消える、人数を増やして集計する場合は、その箇所を修正して再確認します。
その後の改善判断は業務責任者が行います。分類件数だけで優先順位を決めず、業務の発生状況、困りごとの影響、変更による負担を担当者へ確認してください。アンケートの整理が速くなっても、実際の改善成果は別に記録します。原文確認も含めた作業時間と訂正内容を残すと、試行を振り返れます。
社員の声を、根拠付きで整理する練習をする
中小製造業向け社員AI研修について、整理したい回答の種類、原文を確認する担当、社員の経験を用意してご相談ください。題材や利用環境、研修の提供条件は個別に確認します。
自由記述の整理を題材にAI研修を相談するまとめ
社内アンケートの自由記述は、原文と範囲をそろえ、分類基準を作り、引用を照合し、母数を示して確認します。複数ラベルと少数・反対意見を残し、分類表から原文へ戻れる状態にしましょう。経営者は整理の正しさを社員の学習目標とし、改善の決定は追加の事実確認を経て行います。
参考資料・確認日
- IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」(2026年4月2日公開):社員と管理者がAI利用時の情報の扱いを学ぶ参考資料。
2026年10月2日確認。4手順、8回答、分類と集計、確認事項は当社作成の架空教材です。IPAの標準分析方法、実アンケート、実ツールの出力、研修の確定内容や効果を示すものではありません。




