作業分析とは、何を明らかにするものか
作業分析とは、現場で行われている作業を細かく分けて観察し、「どこに時間がかかっているか」「どこにムダがあるか」「人によってやり方がどう違うか」を明らかにする取り組みです。IE(インダストリアル・エンジニアリング)の基本的な手法で、改善の対象を勘ではなく事実で選ぶために行います。
作業分析には見る粒度によっていくつかの手法があり、目的に合わせて選びます。本記事は個々の手法の詳細ではなく、動画を使って分析を一通り進める手順に絞って解説します。
| 見る粒度 | 代表的な手法 | 向いている目的 |
|---|---|---|
| 工程(モノと人の流れ) | 工程分析 | 運搬・停滞など、流れ全体のムダを見つける |
| 要素作業 | 時間観測 | どの作業に時間がかかり、どこでばらつくかを測る |
| 動作 | サーブリッグ分析などの動作分析 | 探す・持ち替えるといった動きのムダを取る |
動画で進める作業分析の5つの手順
ストップウォッチと観測用紙で進める方法もありますが、初めて取り組むなら作業動画を使うのがおすすめです。何度でも見返せるため、見落としに後から気づけ、関係者と同じ映像を見ながら議論できます。
手順1: 分析の目的と対象作業を決める
最初に「何のために分析するのか」を1文で決めます。「この工程がタクトタイムに収まらない理由を知りたい」「新人だけ不良が多い原因を知りたい」のように、困りごとを起点にすると、どの粒度で見るかも自然に決まります。対象は、繰り返し頻度が高い作業や、問題が起きている工程から1つ選びます。最初から複数の工程に手を広げないことが、途中で止まらないコツです。
手順2: 作業を撮影する
作業者に目的を説明し、評価のための撮影ではないことを伝えてから撮ります。カメラは固定し、手元と体の動きが両方映る位置に置きます。1サイクルだけでなく、ばらつきが見えるよう数サイクル続けて撮影します。熟練者と新人の違いを見たい場合は、同じ作業を同じ画角で両方撮っておきます。撮影の具体的なコツは作業動画の撮り方で解説しています。
手順3: 作業を区切って書き出す
動画を見ながら、作業を「部品を取る」「治具にセットする」「ねじを締める」のような区切りに分けて書き出します。区切り目は「手が部品に触れた瞬間」のように、映像で判別できる出来事に置くのが原則です。この区切りを要素作業と呼び、以降の時間測定や改善検討はこの単位で行います。
手順4: 区切りごとに時間を測る
動画の再生時間を使って、区切りごとの開始と終了の時刻を読み取り、所要時間を記録します。複数サイクル分を測ると、毎回ほぼ同じ時間で終わる作業と、回によって時間が大きく変わる作業が分かれてきます。人の作業と機械の自動送り、歩行は分けて記録しておくと、後で待ち時間を見つけやすくなります。
手順5: ムダを見つけて印をつける
書き出した作業を1つずつ見て、付加価値を生んでいない部分に印をつけます。探す、持ち替える、待つ、歩く、やり直すといった動きが代表的です。印をつけた作業には、「なぜそうしているのか」を作業者に聞いて理由を書き添えます。やむを得ない理由があるのか、単なる習慣なのかで、改善の打ち手が変わるためです。
分析結果を改善につなげる見方
時間とムダを書き出しただけでは、改善は始まりません。次の4つの観点で結果を見直すと、どこから手をつけるかが決まります。
- ばらつきが大きい作業: 平均より時間の振れ幅に注目します。回によって時間が変わる作業は、手順や段取りが決まっていない可能性が高く、品質のばらつきにもつながりやすい箇所です
- 待ちと歩行: 機械の完了待ちや部品を取りに行く歩行は、配置や作業順の変更だけで減らせることが多く、費用をかけずに着手できます
- 探す・持ち替える動作: 工具や部品の置き場所が決まっていないサインです。置き場の固定や治具の工夫で取り除けます
- 熟練者との差: 同じ作業で熟練者と新人の時間や動きを比べると、急所がどこにあるかが見えてきます。差の大きい作業ほど、手順書に書き足すべきコツが隠れています
ポイント: ムダの分類に迷ったら、トヨタ生産方式の7つのムダを物差しにすると整理しやすくなります。7つのムダの考え方もあわせてご覧ください。
分析結果を標準作業と手順書に反映する
改善案を試し、効果があったやり方は、その場限りにせず標準作業として決め直します。作業分析で書き出した区切りは、そのまま作業手順書の手順の区切りとして使えます。各手順に、分析で見つかった急所とその理由を書き添えれば、改善後のやり方を新人にも同じように伝えられる手順書になります。
ここを省くと、改善したやり方が改善に関わった人の中にだけ残り、時間がたつと元のやり方に戻ってしまいます。分析、改善、標準化、教育を同じ区切りでつなげることが、作業分析を一度きりで終わらせないための要点です。
作業分析に使った動画を、手順書と比較分析に活かす
動画を使った作業分析では、撮影したあとの書き出しと文書化に最も手間がかかります。AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業手順書を自動生成する製造業向けのシステムで、分析に使った動画をそのまま次の工程に活かせます。
- 手順書の自動生成: 作業動画から手順に区切られたテキスト・画像付きの作業手順書を自動生成できます。改善後のやり方を撮り直せば、標準化した手順をすばやく文書にできます
- 熟練者・新人比較分析: 熟練者と新人の作業動画を比較し、差分と改善提案を含む分析レポートを生成できます。手順5や「熟練者との差」の観点を、言葉にした形で確認できます
- 標準作業組合せ票(TPS準拠): トヨタ生産方式に準拠した標準作業組合せ票のフォーマットでExcel出力でき、標準作業の設計につなげられます
- バージョン管理: 1つのマニュアルに複数のバージョンを保存できるため、改善のたびに手順書を更新しても以前の版を残しておけます
まとめ
作業分析は、手法の名前を覚えるより先に、作業動画を1本撮って決まった順番で見ていくことから始められます。①分析の目的と対象作業を決める ②作業を撮影する ③作業を区切って書き出す ④区切りごとに時間を測る ⑤ムダを見つけて印をつける、の5つの手順で進め、結果はばらつき・待ちと歩行・探す動作・熟練者との差の4つの観点で見直します。効果のあった改善は標準作業として決め直し、分析で使った区切りのまま手順書に反映することで、改善を現場に定着させられます。




