日常点検とは、何のために行うものか

日常点検とは、設備や治具・工具を使う人が、始業前や使用中に決まった箇所を見て、異常の兆しがないかを確かめる活動です。故障してから直すのではなく、音・におい・振動・漏れ・緩みといった小さな変化の段階で気づき、止まる前に手を打つことが目的です。

日常点検は、保全部門が周期を決めて行う定期点検とは役割が分かれます。設備保全全体の考え方は設備保全とはで、運転する人が保全を担う活動の全体像はTPMで解説しています。本記事は、そのうち毎日の点検を現場でどう回すかに絞ります。

区分主な担い手見る内容
日常点検設備を使う作業者五感と簡単な計器で分かる変化(音・漏れ・緩み・汚れ・計器の値)
定期点検保全担当分解や測定が必要な劣化(摩耗・絶縁・精度)

日常点検の進め方

日常点検は、毎回同じ順番で同じ箇所を見ることで初めて変化に気づけます。基本の流れは次の4つです。

  • 決まった時刻に行う: 始業前、段取り替えの後など、点検するタイミングを固定します。「時間があるときに」では抜けが出ます
  • 決まった順路で回る: 設備の周りを一筆書きで回れるように点検箇所の順番を決めます。行ったり来たりする順番は、見落としの原因になります
  • 基準と比べて判定する: 「油量が上限線と下限線の間にあるか」のように、基準と比べて正常か異常かを判定します。「いつもと同じに見える」は判定ではありません
  • その場で記録する: 点検が終わってからまとめて記入すると、見ていない項目にも印が付きます。1項目ごとに記録します

判定できる点検表の作り方

点検表が形骸化する最大の理由は、項目名だけが並び、何を見て何を異常とするかが書かれていないことです。次の順番で作ると、誰が点検しても同じ判定ができる点検表になります。

1. 点検項目を選ぶ

過去の故障やチョコ停の記録、保全担当や熟練者への聞き取りから、「ここが悪くなると止まる」「ここに兆しが出る」箇所を洗い出します。項目を増やしすぎると毎日続かないため、始業前に無理なく回れる数に絞り、分解が必要な項目は定期点検に回します。

2. 見る場所と方法を書く

「油圧ユニット」ではなく「油圧ユニット正面の油面計」のように、どこを見るかを特定します。見る・聞く・触る・計器を読むのどれで確かめるかも書きます。設備の写真に番号を振り、点検表の番号と対応させると、初めて点検する人でも迷いません。

3. 判定基準を書く

正常の状態を、数値か見本で書きます。計器なら正常範囲、目視なら「にじみなし」「ボルトの合いマークがずれていない」のように、判定が分かれない言葉を選びます。言葉で決めにくいものは写真で正常と異常の見本を並べておきます。

4. 記入欄と異常時の連絡先を決める

記入は「○(正常)」「×(異常)」に加え、計器の値は数値で残せる欄にします。数値で残すと、基準内でも少しずつ悪くなっている傾向が後から読めます。×を付けたときに誰へ連絡するかも点検表に書いておきます。

ポイント: 作業ミスを防ぐための作業チェックシートとは目的が違います。作業チェックシートは「やるべき作業をやったか」を、日常点検表は「設備の状態が正常か」を確かめる様式です。前者の作り方は作業チェックシートの作り方で解説しています。

異常を見つけたときの流れを決めておく

点検で×が付いても、その後の動きが決まっていなければ、記録が残るだけで設備は直りません。点検表と一緒に、異常を見つけたときの流れを決めておきます。

  • 止めるか、続けるかの判断基準: 品質や安全に関わる異常はその場で設備を止める、それ以外は連絡して判断を仰ぐ、のように区分します
  • 連絡先と伝える内容: 監督者・保全担当のどちらに、何を伝えるか(箇所・状態・点検時刻)を決めます
  • 処置の記録: 誰がどう処置したかを点検表か保全記録に残し、同じ異常が繰り返されていないかを追えるようにします

異常時の対応ルールそのものの作り方は、異常処置とはで詳しく解説しています。

形骸化させない運用と見直し方

点検表は作って終わりではなく、使いながら直していく様式です。次の3つを定期的に行うと、チェックを付けるだけの点検になりにくくなります。

  • 点検表と故障の記録を突き合わせる: 点検で見つけられなかった故障があれば、その箇所を項目に加えるか、判定基準を見直します。逆に長く異常が一度も出ない項目は、周期を延ばして定期点検に移すことを検討します
  • 点検のやり方を教える: 点検表を渡すだけでは、見る位置や判定のしかたは伝わりません。新しく担当する人には、熟練者が実際に点検する様子を見せて教えます
  • 異常を見つけたことを評価する: ×を付けると面倒が増える職場では、異常が書かれなくなります。異常の発見を止まる前に防げた成果として扱います

点検のやり方を、動画から手順書に残す

点検表に書ききれない「どこをどう見るか」は、熟練者の点検の様子に最もよく表れます。AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、作業手順書を自動生成する製造業向けのシステムです。点検を撮った動画を、点検のやり方を教える手順書として残せます。

  • 手順書の自動生成: 熟練者が点検箇所を順に確かめる動画から、テキスト・画像付きの手順書を自動生成できます。見る位置を画像で示せるため、点検表の補足資料として使えます
  • 字幕付き動画マニュアル・多言語翻訳: 元動画に字幕を重ねて再生する動画マニュアルとしても生成でき、15言語への翻訳にも対応しているため、外国人の担当者にも点検のやり方を伝えられます
  • 承認ワークフロー・バージョン管理: 点検項目や判定基準を見直したときは、承認を経て手順書を更新し、以前の版も残しておけます
  • PDF・Excel出力: 生成した手順書はPDFやExcelで出力でき、設備の近くに掲示する資料にも使えます

点検の様子を撮るだけで、点検のやり方を手順書に

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まとめ

日常点検は、決まった時刻に、決まった順路で、基準と比べて判定し、その場で記録することで、止まる前に変化へ気づくための活動です。点検表は、点検項目を選ぶ、見る場所と方法を書く、判定基準を数値か見本で書く、記入欄と異常時の連絡先を決める、の順で作ると誰でも同じ判定ができます。異常を見つけたときの流れを決め、点検表と故障の記録を突き合わせて見直し、点検のやり方を見せて教えることで、チェックを付けるだけの点検から抜け出せます。