工程図記号とは
工程図記号とは、モノや人の流れを「加工」「運搬」「停滞」「検査」の4つの要素に分類して図で表すための記号です。日本ではJIS Z 8206(工程図記号)で標準化されており、この記号を並べて工程の流れを描いたものが工程分析図です。
記号を使う狙いは、絵を綺麗に描くことではありません。文章で書くと見過ごしてしまう「運搬」と「停滞」を、加工と同じ大きさの1コマとして強制的に書かせることにあります。工程を文章で説明すると加工の説明ばかりになりますが、記号で並べると運搬と停滞の数がひと目で分かり、削るべき対象が浮かび上がります。
関連する帳票との違い: 工程分析図は「流れを分析するため」に描く図です。同じく工程を一覧にするQC工程表は「各工程で何を管理するか」を定めた管理帳票で、目的が異なります。工程図記号はあくまで前者で使います。
JIS Z 8206の基本図記号一覧
基本となる要素は4つで、停滞と検査はそれぞれ2種類に分かれます。
| 要素 | 記号 | 意味 | 現場での例 |
|---|---|---|---|
| 加工 | ○(円) | 原料・部品・製品の形状や性質に変化を与える | 切削、組立、溶接、塗装 |
| 運搬 | ⇨(矢印)または小さい○ | 位置に変化を与える | 台車での移動、コンベア搬送、手渡し |
| 貯蔵(停滞) | ▽(逆三角) | 計画的にためている状態 | 部品倉庫での保管、完成品在庫 |
| 滞留(停滞) | D | 計画外に待たされている状態 | 工程間の仕掛品の山、機械待ち |
| 数量検査 | □(四角) | 数量・重量を測って基準と比べる | 員数確認、計量 |
| 品質検査 | ◇(ひし形) | 品質特性を測って合否を判定する | 寸法測定、外観検査 |
このほかに、流れを結ぶ「流れ線」や、工程の一部を省略することを示す補助的な記号があります。まずは上記6種類を正しく使い分けられれば、分析には十分です。
迷いやすい記号の使い分け
貯蔵(▽)と滞留(D)
判断の基準は「計画してためているかどうか」です。倉庫に置くと決めて置いているなら貯蔵、次工程が空くのを待って積み上がっているだけなら滞留です。
この区別が重要なのは、改善の対象が変わるためです。滞留は工程間の能力バランスの崩れを示すサインなので、山積み表で工程ごとの作業時間を比べると原因の工程が見えてきます。一方の貯蔵は、そもそも在庫を持つ方針そのものを議論する対象になります。迷ったときに全部を貯蔵で描いてしまうと、この最も価値のあるサインを消してしまいます。
数量検査(□)と品質検査(◇)
数を数える・重さを測るのが数量検査、良否や寸法など品質特性を見るのが品質検査です。実務では1つの検査工程で両方を行うことが多いため、その場合は次に説明する複合記号で表します。
運搬を矢印で描くか小円で描くか
どちらもJISで認められた表記です。社内でどちらかに統一することが大切で、混在させると後から見た人が別の意味に読み違えます。加工の○と運搬の小円が紛らわしいと感じる場合は、矢印を選ぶほうが読み間違いを防げます。
複合記号の書き方
1つの工程で複数の要素を同時に行う場合は、記号を組み合わせて表します。書き方のルールは、主となる要素を外側に、従となる要素を内側に描くというものです。
- 加工しながら数量検査: 主が加工なら○の内側に□を描く
- 品質検査が主で数量も確認: 主が品質検査なら◇の内側に□を描く
どちらが主かは「その工程の目的は何か」で判断します。判断が分かれる工程は、複合記号にせず2コマに分けて描くほうが、後の分析で誤解が起きません。
記号で描いたあとの進め方
記号を並べ終えたら、要素ごとに件数と所要時間を集計します。加工以外はすべて、それ自体では価値を生まない工程なので、運搬と停滞の合計が全体のどれくらいを占めているかを確認します。
削る順番は、まず滞留、次に運搬が基本です。滞留は工程間のバランス調整やレイアウト変更で消えることが多く、運搬は工程の配置を近づけるだけで短縮できる場合があります。工程内の人の動きまで細かく分析したい場合は、要素作業に分解してから動作分析に進みます。工程分析図の描き方そのものは工程分析の記事で手順を追って解説しています。
見直した工程の手順を、動画から手順書に反映する
工程分析で運搬や滞留を削ると、作業の順序や配置が変わります。ところが分析の成果が現場に定着しない原因の多くは、変更後の作業手順書の書き換えが追いつかないことにあります。図面上は改善されても、作業者の手元にある手順書が古いままでは元のやり方に戻ります。
AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、テキスト・画像付きの作業手順書を自動生成する製造業向けのシステムです。改善後の作業を撮影して読み込ませることで、手順書の作り直しにかかる手間を抑えられます。出力はPDFとExcelに対応し、元動画に字幕を重ねて再生する形式の動画マニュアルも生成できます。マニュアル内容から理解度テストを自動生成できるため、変更内容が伝わったかどうかの確認まで進められます。
まとめ
工程図記号は、加工(○)・運搬(⇨または小円)・貯蔵(▽)・滞留(D)・数量検査(□)・品質検査(◇)の6種類を押さえれば実務で使えます。迷いやすいのは貯蔵と滞留の区別で、「計画してためているか」を基準に判断してください。滞留は工程間のバランスの崩れを示す最も価値のあるサインなので、安易に貯蔵で描かないことが分析の質を左右します。複合記号は主となる要素を外側に描き、判断が分かれる工程は2コマに分けます。記号で流れを可視化したあとは、滞留と運搬から削り、変更した手順を作業手順書へ確実に反映するところまでを1セットで進めてください。




